システムやサービスの入れ替え・改修を考えるとき、ベンダーロックインという言葉がすぐに出てきます。聞こえ方は悪いことが多いのですが、私たちが見てきた現場では、ロックインには良いものと悪いものがあります。

良いロックインは、特許など独自の技術で、その社でしか実現できない尖った製品に寄り添うものです。替えがきかない価値そのものが、選んだ理由になっている状態です。

悪いロックインは、特別でないのに情報が偏っている状態です。開発元と保守が同じ社に抱え込まれ、保守対象外になるのを避けるために、本意ではないのにその社を使い続ける、つなぐべきインタフェースが非公開で手が出せない、といった話がここに入ります。

ここで、鍵となる考え方を紹介します。

If you can't hack it, you don't own it.

この言い方は、修理や改変できることを所有の条件だと語る人たち(例: Andrew “bunnie” Huang)の考え方に近いものです。ここでの hack は不正侵入ではありません。改修や運用のために、オーナーが理解し、手を入れられる状態のことです。手が出せないなら、実質的には自社の持ち物として扱えていない、という見方です。

ここで大事なのは、いま自分で手を出していないことと、そもそも手を出せないことは違う、という点です。本当に必要なら手が出せる状態と、情報が閉じられていて手が出せない状態では、意味がまったく違います。後者が、悪いロックインの側です。

SIerの価値とは何か

SIerの価値は、「手が出せない状態」をつくることではありません。良いロックイン側にある尖った実現を形にすること、そしてオーナーが知れて手が出せる状態を一緒に整えることです。伴走のあとには、自走できる状態を残すことが大切です。それが、技術を人のそばに置く、という考え方です。

悪いロックインを持ち込ませないための軸は、大きくは「知ること」です。引用が言うように、理解して手を入れられる状態をつくることです。それを現場で可能にする具体は、次の四つがあります。

設計図書の工夫

何をなぜそう決めたかが残っていないと、改修の入口が見えません。設計とビジネス上の why が一致した図書にしておくと、後から触る人が迷いにくくなります。

コードそのものの工夫

手元で再現できないと、知ることも手を入れることも止まります。Infrastructure as Code などでインフラを再現可能にしておくことは、その土台になります。

契約の工夫

知的財産の帰属をはっきりさせておくと、誰が何を理解し、どこまで手を入れてよいかが後から争いづらくなります。

運用手順の工夫

動かし方・止め方・戻し方が残っていないと、現場は抱え込みに戻りやすくなります。手順を残し、共有しておくことが、日常の「知ること」になります。

ロックインを敵視するのではなく、良いものは活かし、悪いものは持ち込ませない。技術は人のそばで手が出せる形にしておくときに役立ちます。

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